味覚の衝突

 

酢豚に入ったパインが許せるかどうかといった質問をおれのTwitterのフォロワーに尋ねてみたところ、57%が許せると答え、43%が許せないと答えた。

 

おれたち人間は味覚を学ぶ。「甘じょっぱい」とか「ほろ苦い」とか、あとは日本独特の味覚である「旨み」とか。重要なのは言語で、言語化されたその味覚を愛してしまう。すでに味覚というものはある程度数値化されてしまっていて、今後はそれこそ甘じょっぱいのような味覚と味覚が融合したものが生まれるのかもしれない。酢豚とパイナップルというのはそこが危うい。通常、酢豚にパイナップルを入れるのは、酸味を出すためだと言われている。カレーの中にすりおろしたリンゴを入れるのと同じ、隠し味だ。カレーの中のリンゴの隠し味は、その名の通り隠し味である。なぜならおれたちがカレーを食べていて、リンゴを口にしたと感じる瞬間がないからだ。だがパインはどうだろうか。酢豚の中のパインは、パインである。温まり、酸味の効いたソースのかかったパインだ。ここに引っかかる人が多いのではないだろうか。次元の話をすると、玉ねぎや人参を差し置いて、パインは豚肉の次に存在感が大きいとも思える。ベクトルが違う2つの味覚が存在するとき、どちらかが隠れているのが通常だとするおれたちにとって、その2つが具材として同じ料理の中に混在していることは、未だ議論の対象になってしまうのである。

 

実は同じような質問が2002年ごろにされたところ、実に70%近くの人が許せないと答えている。が、どうやら今回は許せなくもない人が多いようだ。これは非常に時代を感じる結果で、もしかしたらパイン入り酢豚を作る家庭が多くなったのかもしれない。その結果、初めて食べた酢豚はすでにパイン入りだったという人が増えたとも取れる。味覚は学ばれていく。これから先、また物議をかもす新しい味覚が出てくるのが楽しみだ。